【学術集会報告】第30回サル疾病ワークショップ

IMG_0001 2.jpg

第30回サル疾病ワークショップ

【開催日】2022年7月1日(金)

【開催形式】ハイブリッド

  • 現地会場:文部科学省研究交流センター(茨城県つくば市竹園2-20-5)
  • Online: Zoom Webinar

【参加費】1,000円

【大会長】鈴木 照雄(ハムリー株式会社)

【主催】サル類の疾病と病理のための研究会

講演要旨

SPDP会員専用サイト「Workshop Archives」にて公開中。
※SPDP会員用アクセスID・パスワードが必要です。

参加者アンケート

参加者の皆様から本日までに寄せられたご意見やご要望をまとめました。
参加者アンケート回答_WS2022.pdf

IMGP8944.JPG【現地会場】文部科学省研究交流センター外観

Session 1 サル類の検疫および感染症対策


私たち人類はいく度も悪疫を経験し,その経験を基に医療を発達させてきました。にもかかわらず,感染症の世界的な流行はいまだ繰り返し発生しています。飼育下のサル類もヒト社会に蔓延する感染症の渦中に意図せず巻き込まれ,その結果としてヒトへの感染源として警戒の対象となっている現実があります。生物種を越えた厄災の連鎖を断ち切る責任は,私たち管理するヒトの側にあるように思います。COVID-19の終息は未だ見通せず,長く使用してきた国産動物用ツベルクリンの流通が停止しました。また,サル類そのものの流通もいま,変わろうとしています。Session 1では改めて私たちとサル類を取り巻く感染症について深く考える機会となりました。

ヒトの往来やサルの流通を考慮すると,サルの感染症は一施設の問題にとどまりません。感染症発生の情報のみならず,予防・治療法に関する情報についても積極的に発信し,共有する姿勢が求められます。

■ □ ■

[座長]高野 淳一朗, 横田 尚子

  1. サル類における輸入検疫の歴史
    赤荻 誠一郎 (ハムリー株式会社)

  2. 動物用ツベルクリン (MOT) の輸入方法について
    竹之下 誠 (株式会社 イブバイオサイエンス)

  3. 霊長類の野外研究と感染症対策
    藤田 志歩 (鹿児島大学)
IMGP9804.JPG竹之下誠講師】サル用ツベルクリンの輸入手続きについて解説

Session 2 脳科学研究におけるサル類の役割


高度に発達した医療のお陰で人々の寿命が延びた反面,脳神経科学の分野では解決すべき課題がどんどん浮かび上がってきています。サル類は古くからこの領域の研究に使用されてきました。Session 2では現在進行形の基礎的な研究から臨床応用を目前に控えた研究までその実例が紹介され,サル類がこの分野に必要な研究リソースであることを改めて認識しました。これらの研究成果を共有する情報ネットワークが構築されることにより,研究の伸展に役立つことを願っています。

■ □ ■

[座長]揚山 直英, 棟居 佳子

  1. カニクイザルの睡眠/覚醒薬に対する応答
    牧 武宏 (ハムリー株式会社)
  2. アルツハイマー病のZoobiquity研究:ヒトサロゲートモデルとしてのカニクイザル
    木村 展之 (岡山理科大学)

  3. 実用化を目指した重症虚血性脳卒中に対する神経保護薬の研究開発
    丸島 愛樹 (筑波大学)

IMGP9809.JPG【丸島愛樹講師】レドナノックス粒子の開発状況を説明

Session 3 一般口演・CPC


臨床・病理カンファレンス (CPC) 4題と一般口演5題が発表され,それぞれ質疑応答が交わされました。CPCはカニクイザル,ニホンザル,マントヒヒ,コモンマーモセットと多様なサル種が取り上げられ,また対象疾患もウイルス性肺炎,糖尿病,鉛中毒,悪性リンパ腫と多岐に富んだ内容でした。サル類の疾病の診断,解析,治療について記載した教科書や公表論文が他の動物種に比べて乏しい現状,これら生の情報は大変貴重です。

一般口演ではサル類の生物学的特性や希少病態など様々なテーマが取り上げられ,プログラム時間いっぱいまで議論が繰り広げられました。

■ □ ■

[座長]櫻井 康博, 横田 尚子

CPC

  1. 新生児カニクイザルのサイトメガロウイルス性肺炎
    棟居 佳子 (筑波大学大学院)

  2. 下痢・削痩を主訴としたニホンザルの1例
    兼子 明久 (京都大学 ヒト行動進化研究センター)

  3. マントヒヒ Papio hamadryas の鉛中毒例における脳病変の検討
    福井 啓人 (岡山大学 獣医学部)

  4. コモンマーモセットの悪性リンパ腫
    片貝祐子 (予防衛生協会)

一般口演

  1. 非拘束下におけるコモンマーモセットの睡眠覚醒リズム解析
    石川 明良 (ハムリー株式会社)

  2. ニホンザルにおける左室緻密化障害の2症例
    澤田 悠斗 (麻布大学 大学院)

  3. 室内繁殖カニクイザル (Macaca fascicularis) の初潮,閉経等の解析
    小原 実穂 (医薬基盤・健康・栄養研究所 霊長類医科学研究センター)

  4. 管理獣医師から見た実験動物 (サル) の剖検手技
    櫻井 康博 (ハムリー株式会社)

  5. Post-国産ツベルクリン時代のサル結核検査法
    板垣伊織 (サル類の疾病と病理のための研究会)

※CPC,一般口演は発表者氏名のみ掲載

IMGP9792.JPG

【オンライン配信中】
会場設備の都合により,演壇上のスピーカーの音声を中央の高性能マイクロフォンで拾って配信する。

【ヘッダ画像】
高齢カニクイザル大脳。散在するアミロイドプラーク。H.E.染色。